2022.07.02
環境を考える

再生可能エネルギーの問題点とは? 各種再生可能エネルギーが抱える課題

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近年、多くの国や企業が導入を進めている再生可能エネルギー

  • エネルギー源が枯渇しない
  • 温室効果ガスを排出しない
  • 場所を問わずに多様な環境からエネルギー調達ができる
  • エネルギーメーカーとして雇用を生み出すことができる

このように、再生可能エネルギーには多くのメリットがあります。

しかし、デメリットがあることも忘れてはいけません。
例えば、太陽光発電や風力発電の場合は、天候により発電量が変化するため、安定した供給をすることが難しくなります。
他にも様々なデメリットがあり、今後再生可能エネルギーをより導入していくためには、そのデメリットともうまく付き合っていく必要があるのです。

今回は記事を通して、「地球環境」と「私たちの豊かさ」の観点からエネルギー問題とどう向き合っていくべきか。一緒に考えていきましょう!

再生可能エネルギーはコスパが悪い!?

再生可能エネルギーの主な問題点として、「従来のエネルギーに比べて、エネルギーの生産コストが高い」ことが挙げられます。つまり、コスパが悪いのです。

なぜ、コスパが悪いのか。
2つの具体例から、その理由について見ていきましょう。

広い土地が必要になる

エネルギー密度とは、「体積や面積、重さ当たりのエネルギー量」であり、再生可能エネルギーはエネルギー密度が極端に低いことが問題点として挙げられています。
ここで、ひとつの問題を考えてみましょう。

ここに、1,000リットルの重油があります。
この重油を燃やすとたくさんのエネルギーが得られますが、ここで得られるエネルギーと、同じ量のエネルギーを水を使って生み出そうとすると、何リットルの水が必要になるでしょう?
(高さ100mの大きなダムを使って水を落とし、水車を回転させてエネルギーを作る水力発電を利用するとします。)

いかがでしょうか。
正解は、約4,000万リットル。実に、25mプール100個分の水が必要なのです。
つまり、同じエネルギー量を生産するにあたって、水力発電の水量は、火力発電の重油量に対して実に4万倍の水の投入が必要になるのです。

また問題は量だけではありません。実際にこれを行うとなると、水を使用するために必要な土地も広がるため、おのずと生産場所は限られてきます。

太陽光発電もコスパが悪い?

再生可能エネルギーの代表格である太陽光発電も、火力発電に比べたら、コストパフォーマンスは高くありません。
ある「火力発電所」と「太陽光発電所」を比較してみると、必要な設備の面積は「火力発電所:太陽光発電所=1:2」と、太陽光発電の方が広い敷地が必要なのに対して、同じ面積あたりのエネルギー生産量はなんと「火力発電所:太陽光発電所=2,600:1」というデータもあるほど。
火力発電と同じ電力を太陽光発電で賄おうとすれば、莫大な土地が必要になることがわかると思います

このように、再生可能エネルギーは「エネルギー密度が低い」という特徴から、エネルギー生産にあたって広大な土地が必要になってしまうことが、問題点として挙げられます。

お金がかかる

「場所」のコストがかかるということは、当然「お金」のコストも発生します。
化石燃料と同等のエネルギー量を得るためには広大な土地が必要になるため、建設費や人件費等のコストが発生します。

さらに、日本の太陽光発電における「太陽光パネル」や風力発電における「風力発電機」の価格は、同等の物価水準の国々のそれらと比較すると、明らかに高いという事実も。

このように、「場所」と「お金」の両方から、再生可能エネルギーはコスパが悪いのです。

それぞれの再生可能エネルギーの問題点とは?

ここからは、具体的な再生可能エネルギーを挙げていきながら、それぞれの問題点について詳しく見ていきます。またこちらの記事でも再生可能エネルギーについて紹介しているので、ぜひ読んでみてください。

太陽光発電 〜屋外に設置することによるデメリット〜

太陽光発電には、以下のようなデメリットがあります。

  • 導入コストが高い
  • 管理コストが高い
  • 生産量が天候に左右される

太陽光発電の導入には、大きなコストが発生します。
一般家庭で太陽光パネルを購入して設置するとなると80万〜130万円の費用が発生し、非住宅向けの太陽光発電システムでは1kw生産するにあたって約25万円もの費用がかかるとも言われています。

また、太陽光パネルは屋外に設置されるため、定期的なメンテナンスが必要となります。
台風やゲリラ豪雨などの自然災害による破損や、モジュールの汚れによっては、発電量の低下に繋がります。そして、屋根上や人手のない場所への設置が大多数であることから、日常的な点検がしづらいという観点もあります。
さらには、生産量が天候によって左右される点も併せて考えると、太陽光発電は不確実性が高いとも言えそうです。

風力発電 〜風がよく吹く場所にはアレがない!?〜

風力発電とは、風の力を利用して風車を回すことで発電する方法です。
風力発電の問題点として、「風力発電適地は送電線等のインフラ整備がされていない場所に多く、送電手段を確立しづらい」という点が挙げられます。そして、インフラ整備がされていないため、設備コストが大きくかかってしまうのです。
さらには、発電には風が必要なのはもちろん、風が強く吹きすぎても風力発電機の破損の可能性もあることから、太陽光発電同様に導入にあたっての不確実性が大きい点が課題となっています。

バイオマス発電 〜手間がかかることで起きる問題点〜

バイオマス発電とは、「バイオマス(化石燃料以外の生物由来の再生可能資源=木くず、可燃ごみ、廃油など)」を燃料として発電する方法です。再生可能エネルギーの一つとして注目を集めるバイオマス発電には、どのような問題があるのでしょうか。

結論として、「多方面からコストがかかること」が挙げられます。

  • 燃料自体のコスト
  • 燃料の運搬にかかるコスト
  • 木材チップの生成にかかるコスト

このように、バイオマス発電を実施するにあたって各種ポイントでコストが発生します。
また、実施にあたって多くの企業が発電に関わるため、関係者間でのスムーズな連携やコミュニケーションが必要になります。
加えてゴミや廃棄物、さらには生物糞尿を利用する点から、倫理観の対立構造が生まれることもあるのです。

水力発電 〜とにかくお金がかかる!〜

水力発電とは、水を高いところから低いところへ落として水車を回転させることで発電する方法です。
水力発電は、一度設立してしまえば運用後のランニングコストは比較的小さい一方、初期投資金額が大きく、投資額の回収期間が長くなってしまうという経済的な問題があります。

例えば、日本を代表するダムの1つである「黒部ダム」の建設に必要となった公費は、実に513億円でした。さらには、設立にあたってなんと7年の歳月を要したと記録されています。

また、大規模に発電するためには「ダム式」での発電となるため、設立にあたっての環境破壊や動植物に対する生態系への影響調査を慎重に行うことが不可欠であることから、導入までにクリアしなければいけない課題が、多々あるのです。

地熱発電 〜とにかく時間がかかる!

地熱発電とは、地下にあるマグマの熱エネルギーにより発生した上記を取り出し、タービンを回して発電する方法です。

地熱発電の問題点は、水力発電と同様に開発コストが高いところ。そして開発期間は実に10年以上を超えるところが挙げられます。
これだけのコストと時間がかかる理由としては、地質調査や地盤調査を行う必要があるからです。地底深くの熱源を利用するため、調査のためには掘削作業を行う必要もあり、これらの作業に莫大なコストと期間を要します。

さらに、いざ調査をしてみても「この地域では発電はできない」という結論になることも。
また1からやり直しとなり、実現には多大な労力を割かなくてはなりません。

太陽熱利用 〜導入のハードルが高い〜

太陽熱利用とは、屋根や屋上、外壁などへ太陽集熱器を設置し、太陽の熱で空気や水の温度を上げることによって暖房用や給湯用に利用するシステム。
温室効果ガスの排出量を抑制できるため、省エネ対策として大きな注目を集めており、さらにはグリーン住宅ポイントが発行される対象にもなっています。

そんな太陽熱利用にはどのような問題点があるのでしょうか。
代表的な問題として、システム導入にあたっての価格が高いということ。具体的な価格としては、家庭用では数10万、業務用では数100万円の規模になります。
また、太陽の熱を利用するため、天候や日照時間等にエネルギー量が左右されることから、安定的な供給は見込めません。

環境に配慮したシステムである一方で、初期費用の大きさや導入後の不確実性から、まだまだ課題の多い方法となっています。

氷雪熱利用 〜冷気を保存するために費用がかかる〜

氷雪熱利用は、「冬の間に積もる雪や氷をアイスシェルターや雪室などに保管し、その冷気を冷房として利用するシステム」です。
寒冷地の気象特性を活用するため利用地域は限定される一方で、除排雪で膨大な費用がかかっていた雪を利用することから、有効な二次利用として大きな可能性があると言えるでしょう。

しかし、季節をまたいで冷気を確保するため、断熱性の優れた大きな容量の雪氷貯蔵施設が必要です。
当然ながら設立費や運営費、維持費が必要となることから、「利用するのにかかる費用」と「節約できるエネルギー量」を見極めた上で利用していくことが求められます。

温度差熱利用 〜景観や騒音の課題〜

地下水や河川水などは、夏場は水温の方が温度が低く、冬場は水温の方が温度が高くなります。こうした「水の持つ熱」をヒートポンプを用いて利用するという、水源を熱源としたエネルギー生産法が温度差熱利用です。

しかし、冷暖房などのエネルギー供給源として全国で広まりつつありましたが、今ひとつ普及していないのが実際のところ。

その理由として、温度差熱利用はヒートポンプの利用などの建設工事の規模が大きいため、初期コストが高いことが挙げられます。

さらには、景観に影響があったり、騒音が発生したりすることから人が住んでいる場所には導入しにくいという問題があるため、今後広く普及させていくためには地方公共団体との連携といった取り組みが必須になってくるでしょう。

地中熱利用 〜初期費用が高い〜

年間を通して気温が変化する地上とは異なり、温度が一定の地中を利用し、地上と地中の温度差を利用することで効率的な冷暖房等を行う方法が地中熱利用です。

しかし、地中熱利用も他の方法と同様に、設備導入(削井費用等)にかかる初期コストが高いこと、そして設備費用の回収期間が長いことが問題点となっています。

増えていくエネルギー需要と、減っていくエネルギー自給率

ここまでは、「再生可能エネルギーは、広大な土地とコストがかかる」という問題点を、それぞれの再生可能エネルギーの例を用いて詳しくご紹介してきました。

日本では、1970年代に起きた2度のオイルショックを教訓に、官民をあげて省エネルギーに取り組んだ結果、エネルギー利用効率は世界的にも高いことが明らかになっています。
一方で、止まることのない経済成長や文明発達により、日本のエネルギー需要量自体がオイルショック後も拡大し続けている現状があります。

さらには、エネルギー自給率が低い「化石燃料エネルギーの資源」のほとんどを輸入に頼っていることや、東日本大震災後にすべての原子力発電が停止したこともあり、2014年には日本のエネルギー自給率は過去最低を記録しました。

ここまで述べたように、新たな可能性があるとされている再生可能エネルギーにも、多くの解決すべき課題が存在することが事実です。
こうした現状に対してどのように向き合っていくか、私たち一人一人の当事者意識が問われていくでしょう。

まとめ:地球環境を守ることと、豊かな生活を守ること

今回は、「再生可能エネルギーが抱える問題点」についてご紹介しました。
再生可能エネルギーが抱える問題点は、地球環境や自然災害、国の経済的成長に大きく影響されるため、すぐに解決できるものではありません。

近年、地球環境への配慮から「脱炭素化」の動きが進んでいます。
その一方で、地球環境に配慮するあまり、私たち自身の生活が苦しくなることは避けたいものです。なぜなら、現代の文明や文化、豊かさを保ち続けるためには、私たちの生活には十分なエネルギーが必要になるからです。

「私たちが暮らす地球の環境」と「私たちが豊かに生活するために必要なエネルギー」は、どちらもなくてはなりません。

どちらも私たちに欠かせないものであるからこそ、「地球環境」と「私たちの豊かさ」のバランスを模索し続け、私たち一人一人がこの問題について自分ごとになることが、エネルギー問題の解決への第一歩ではないでしょうか。

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